株とは何か?
株とは何か。辞書で引くと、植物の根のついたひとまとまりだとか、社会でのある特定の地位や特権などと言った説明が出てくる。前者は切り株とかの株、後者は相撲部屋の親方の年寄株などといった言葉で使われる。ちなみに同じ読み方で蕪と書けば白くて丸い野菜のカブのことである。この記事でどのカブについて説明するのかというと「株式」について説明するつもりである。
単に「株(かぶ)」とよばれる「株式」は株式会社の構成員としての地位や権利のことである。「株式」の「株」は冒頭の辞書の説明で言えば2番目に当たる。「式」は中世の土地収益権を意味する「職」に由来しており、その2語を合わせた「株式」で、ある権利を持つ地位を表しているわけだ。つまり、平たく言えば会社の権利の一部を持つことができるシステムのことである。「会社の権利の一部」と言っても具体的にイメージがわかないかもしれないが、株式ができた起源を知るともう少し理解しやすいかもしれない。
株のはじまり
株式のはじまりは16世紀〜17世紀ごろ、大航海時代のヨーロッパに遡る。かつてヨーロッパにおいて胡椒やその他香辛料は貴重品だった。アジアとの交易で胡椒や香辛料をもたらす航海は、莫大な利益を生む一大事業であった。しかし航海を行うにあたっては船の建造代をはじめ巨額な費用が必要になるため、航海者は金銭的支援を必要とした。たとえば、コロンブスを援助したスペイン王女イザベラや、ポルトガルのエンリケ航海王子など、大航海時代初期は王侯貴族や大金持ちがパトロンとなっていた。投資した航海事業によって当時ヨーロッパで貴重だった胡椒や香辛料を持ち帰ることができれば、パトロンには投資額を上回る大きな利益がもたらされた。その一方で、当時の航海は船が難破したり海賊に襲われる危険も多く、もしそうなった場合はパトロンに何ももたらされなかった。いわばハイリスク・ハイリターンな事業だったのである。
それでも航海事業は魅力的だった。しかも前述のコロンブスが「新大陸」の侵略を開始して以降は植民地獲得という新たな魅力が各国での航海事業に拍車をかけた。身分を問わず、航海が成功して新たな領土を獲得することで王侯貴族に匹敵する富を手に入れることが可能となったのである。
そのような中で、一部の特権的な金持ちに限定せずに広く資金を募る方法が編み出された。それが株式である。一人に全て援助してもらうのではなく、大勢の人に部分的にお金を出してもらい、航海から戻ってきたら、それぞれ投資した割合に応じて利益を分配する仕組みである。この仕組みにより航海が失敗したときのリスクが分散されることとなり、より投資しやすいシステムとなった。初期の株式は1回の航海ごとに資金を募り、航海から戻ると利益を精算して完了していた。この仕組みを継続的に行い初めて株式会社という組織となったのは1602年設立のオランダ東インド会社である。その後、産業革命の時代に入り効率的に多額の資金を集める方法として株式会社という仕組みは発展を遂げ現在に至る。
株で利益を出す方法
ではこの「株」をいったいどのように運用すべきだろうか。当然、株を買うのは利益を得るためである。まず、本来的に株で得られる利益は配当金である。企業は株主へ、保有株数に応じて利益の一部を分配する。1年に1回もしくは2回、株を持っている限り基本的に支給される。ただし、業績が悪化している場合は分配されない可能性もある。
そもそも株はどこから買えるか。それは株を発行している企業からである。しかし、企業から発行された株を直接買えるのは株が新規公開されたタイミングに限られており、基本的には株は売りたい人から買う。そして、株を買いたい人、売りたい人、それぞれの注文を取りまとめるのが証券取引所である。売り注文と買い注文のバランスは一定ではない。その株を買いたい人が多い時はその株の値段は上昇し、売りたい人が多ければ株の値段は下がる。株を買って、株価が買値よりも高くなったときに売れば利益となる。反対に買値より安く売れば損失となる。株価は常に変動しており、買った株の価格が一度下がったとしてもずっと下がったままであるとは限らない。基本的に株は上昇下降を繰り返しているので、売りたいタイミングまで待っていれば良い。ただし、その会社が倒産してしまうとその株の価値は無くなってしまうので、ある程度安定している会社の株を買う必要がある。
では、株価が上昇している時しか取引で利益が出せないかというと、そうではない。株価が下がることによって利益を得る方法がある。それが「空売り」である。空売りではまず株を借りる。そして借りた株を一旦売ってしまう。売った株はお金に変わる。しかし、借りている株は当然返さなければならないので、売り払った分と同じ数の株を買い戻す。このとき、売ったときよりも安く買い戻せれば利益となる。反対に売値よりも高く買い戻せば損失となる。空売りで注意すべき点は損失の可能性が無限だということである。通常の買いの場合の最大の損失は買った株の価値が0になることである。言い換えれば買った値段以上は損しないということだ。対して、空売りでは株価が上がれば上がるほど損となり上限がない。通常の買いであれば利益が出るまで保有していれば良いが、空売りの場合は株を借りている状態なので貸株料などが発生する。損失が多くなった場合は、追加証拠金を入れる必要も出てくる。そのため、空売りは通常の売買よりもよりリスク管理をする必要がある。
株に手を出すべきかどうか
株はなんとなく興味あるけど、いまひとつ手を出せずにいる、そんな人は多いのではないだろうか。たしかに、真面目に働いて堅実にお金を貯めることはリスクが少ないかもしれない。しかし、労働で得られるお金には限りがある。収入を増やすには会社で成果を認められ昇進や昇給をする必要がある。だが昇進や昇給は確実にあるものではなく、役職が高くなればなるほどその席は少ない。もし、その仕事に心からやりがいを感じていて極めたいという熱意があるのであれば、仕事で努力して上を目指すのもいいだろう。しかし、資産形成の方法としては非常に効率が悪い。人生の多くの時間を費やして、仕事の努力だけによって十分な資産が得られる可能性はそう高くない。当然、費やした時間は返ってこない。そういう意味では給与だけでの資産形成はリスクが高いと考えられる。
働いて得たお金を銀行にずっと預けておいても金利は0.01%になるかならないかである。つまりほとんど眠らせておくだけになってしまう。もし、その眠らせているお金を株として運用すれば、そのお金がさらなるお金を生む可能性があるのだ。つまり、お金に働いてもらうのである。たとえば、汗水たらして労働で稼いだ100万円も、株で儲けた100万円もお金としての価値は全く変わらない。
もし株をやってみようか迷っている場合はとりあえず証券会社の口座を作り、自分で決めた金額の範囲内で買ってみてはいかがだろうか。選ぶ基準は、配当の多さとか優待の内容とか様々な要素があるが、まずは自分が信頼のおける企業を選んでみよう。株を始めてみると、株価に影響を与える世界情勢や最新技術、新しいビジネスや流行のトレンドなど広い範囲で興味関心が向くようになる。株を始めることによってまず最初に得られる利益は、労働者や消費者としてしか社会に関わっていない時には持てない、世の中に対する複合的な視野である。
コメント
すごいですわ。株をやりたくなりました。金がないのは問題だけど、
先生は別の方法で株より儲けられるから大丈夫です