日本一短い鉄道で行く時間旅行

ぽんぽこツアーズ

あなたは成田空港を知っていますか?このような質問を投げかけたら「馬鹿にしてんのか?」と怒りを買う可能性があるくらい有名な日本の空の玄関口ですね。
では、そんな成田空港の近くを走っている芝山鉄道についてはどうでしょうか。「知ってるよ馬鹿!」とマジギレする人は鉄道オタクか空港関係者でしょう。
芝山鉄道は東成田〜芝山千代田の区間を結ぶ日本一短い鉄道路線です(鉄道の定義により諸説ありますが)。

 今回はそんな芝山鉄道で時間旅行にご案内します。

 ここは芝山千代田駅。芝山鉄道の終点です。周囲は空港関連施設ばかりで、住宅などは見当たらず、とても利用者がいるようには思えません。「いったいこの鉄道、誰得なんだ」そう思う方も多いでしょう。実は、現在終点になっている芝山千代田駅は途中駅になるはずで、芝山鉄道はもっと延伸する計画だったのです。
芝山鉄道の歴史は成田空港建設と大いに関係があります。広大な空港が建設されることによって、地域の東西の交通が分断されてしまう、この不便を被る地元住民や企業への保証として国が建設を確約したのがこの芝山鉄道でした。成田空港の運営会社の傘下で、千葉県、京成電鉄、日本航空、芝山町、成田市なども出資する第三セクター方式で運営されています。この芝山鉄道は、当時の成田空港駅から芝山町中心街を通り九十九里浜方面まで延伸する予定だったそうです。芝山鉄道の会社設立は1981年ですが、用地買収の問題など紆余曲折があり、2002年にようやく現在の東成田〜柴山千代田の区間が開業して現在に至ります。

駅の入り口には古墳時代を思わせる顔出しパネルが。ここ芝山町は古墳時代の遺跡が多く出土し、はにわの町として知られています。芝山千代田駅はそんな芝山町の遺跡群について学べる芝山町立芝山古墳・はにわ博物館の最寄駅となっています。といっても駅からさらに「芝山ふれあいバス」で24分かかります。

芝山千代田駅は単式ホーム1面1線の高架駅です。止まっている車両は京成電鉄の車両です。写真の列車の行先表示が「上野」となっているように、ほとんどの列車は京成線との直通運転となっているため、実質京成線の延長区間のような感じもします。芝山鉄道の車両もありますが京成からのリース車両のため、ほぼ京成です。

芝山千代田を出発してわずか3分程度の乗車時間で終点東成田駅に到着します。終点と言っても前述の通り京成線直通なので列車はそのまま京成本線経由で上野に向かって行きます。

 わずか3分間の鉄道旅ですが、大きな旅客機を間近で見れるその車窓は芝山鉄道ならではの醍醐味と言えます。肝心な写真は撮り忘れたのでご自身の目で確認してみてください。
 さて、ここは芝山鉄道の東成田。しかし前述の通り芝山鉄道は成田空港駅を起点とする計画でした。では現在の起点/終点であるここ東成田とはいったいどこなのでしょうか。
 実はここ東成田こそかつての成田空港駅だったのです。成田空港開業にあたって京成電鉄は当然、旅客ターミナルまでの乗り入れを計画していました。しかし当時の運輸省は成田新幹線計画を進めており、京成線の旅客ターミナルへの乗り入れに難色を示したのです。その結果として京成線の成田空港駅は旅客ターミナルから1kmも離れた場所に建設されたのです。それが現在の東成田駅です。その後、成田新幹線計画は頓挫し、旅客ターミナル直下の成田空港駅がJR東日本と京成電鉄共用の駅として開業しました。そのことにより、旧成田空港駅は東成田に改称されたのです。

空港の最寄駅としての役割を終えた東成田駅ですが、成田空港駅だったころの様子を色濃く残しています。現在使用しているホームも昔ながらの装いですが、対岸の現在使用していないホームは30年前の姿をそのまま残しています。一番奥の壁にはデビューしたばかりの東武スペーシアの広告が。

現在使用していない線路に”AE S”と書かれた標識が立っています。これは京成スカイライナーが停車することを示すものです。ここ東成田が空港アクセスのための駅だったことがよくわかります。ちなみに今のスカイライナーは上野から高砂まで京成本線を通り、その後北総線、成田スカイアクセス線を経由してほぼ直線的に結んでいますが、それ以前は京成本線を通って今よりもだいぶ遠回りするルートで運行されていました。旅客ターミナル直下の駅の開業に加え、スカイライナーの新ルートの開通や在来線最速の160km/hの実現による所要時間の大幅短縮など、空港アクセスの利便性が大幅に向上したことがわかります。

ホームから上がり、改札へ向かうと広々とした空間が広がっていました。今は誰もいませんが当時は空港利用者が行き交っていたことが想像されます。

現在は閉鎖されており、中には入れませんが、スカイライナーのりばの案内などが見えます。
 これは比較的近年貼られたものでしょうか。スカイライナーの歴史を物語るポスターが掲示されていました。

改札を出て地上出口へ向かう階段です。ここにも成田空港駅時代を思わせる広告が残っています。

地上出口です。行ったときはもう夜で暗くなっていたので、周囲はあまりよくわかりませんでしたが、一般の人が利用できそうな施設は見当たりませんでした。成田空港駅時代はここから発着するバスで第1ターミナルへ向かったそうです。現在も空港施設等への送迎バスが出ているそうです。

東成田で降りた場合、成田空港へどうやっていけばいいでしょうか。再び電車に乗れば付けそうな感じもしますが、東成田の次の駅は京成成田駅で、現在の成田空港駅を経由していないので、電車で行くには京成成田まで出てから成田空港行きに乗り換えて引き返す必要があります。実は東成田から空港へは、地下道を利用するのが便利です。結構長いので疲れますが。

長い地下道を抜けて、かつての空港駅から成田空港に着くと30年前から現代に戻ってきたような感覚が味わえます。

 ぜひ成田方面へ行った際は、日本一短い芝山鉄道での時間旅行を楽しんでみてはいかがでしょうか。

コメント

  1. 神がくれた美しい体 より:

    すごい、、、歴史の勉強になります。成田国際空港を建設するにあたり、結構激しく農民の方がデモをする番組をみた事あります。もっと、いい方法がなかったかなと思いますね。
    それか、韓国見たいにデカイ島を埋め立て空港をつくれば、農民の反発もなく建設ができたかなと思いました。

    • サバイバルいばる より:

      ありがとうございます。成田闘争についても今度書いてみようかと思います。韓国は埋め立てなんですね、関西国際空港みたいな感じですかね。

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